「BUNGO~ささやかな欲望~」の「人妻」永井荷風※ネタばれあり
こんにちは。みや子です。 さて、本日は「BUNGO~ささやかな欲望~」というオムニバス映画の「人妻」を見ました。永井荷風原作です。
監督は熊切和嘉。学生時代に卒業制作で撮られたという映画「鬼畜大宴会」の残虐なイメージが強く「絶対に見ない」と決めていた監督でしたが、ひょんなことから見てしまい、後から熊切監督だと知ったのでした。
残虐表現が苦手な方も大丈夫。「人妻」は暴力シーンなど無く、そしてとても面白いですよ。
タイトルの通り、この作品は下宿先の人妻に翻弄される男性の話です。
舞台は1947年頃?の下町。 原作を読んだところ、江戸川の小岩が舞台のようです。
主人公がキャバレーに行くシーンがありまして、そのいかがわしさと妖しさに大正ロマン・昭和モダンを感じられるかも?下宿の家の中も古めかしい雰囲気でレトロ好きにはたまりません。
余談ですが、私浅草のロック座というストリップ劇場にストリップを見に行くのが好きなのですが、あすこは建物もショウも昭和を感じられます。余所へはあんまり行きませんが、場所によっては雰囲気も全然違うのかもしれません。浅草ロック座は、おすすめです。
さて映画ですが、色っぽい話ではあるのですが、私には男女関係無くある、ほろ苦い青春のような切ないお話に感じられました。
谷村美月さん演じる人妻は、お喋り好きで世話好きの「近所のおばさん」という感じ。谷村美月さんの清楚で上品なイメージとは離れていて、最初はちぐはぐな感じがして、これはダメな配役かと思いましたが、ラストシーンでは見事に無神経で雑で、どこかいたずらっぽい雰囲気が出ていました。
対する人妻に妄想してしまう男性の役は大西信満さんという方で、この方も見た目は端正なため間抜けな役に合っていないと思っていたのですが、これがどうしてとてもはまり役でした。
30前の独身男性が、24、5の若女房と一つ屋根の下に暮らしてしまったのだからさあ大変。天真爛漫な奥さんに主人公は恋というかなんというか悶々とした気持ちを抱きます。まして夫婦は大変仲が良いため、主人公は嫉妬します。
紳士淑女の皆様も好きになったことも好きになられたこともあって、心当たりがあるかと思いますが、男女ともに気安く天真爛漫に接されるというのは、つまり自分はおそらく恋愛対象に無いのです。
でも自分が惚れた方ですと、その気安さを自分への特別な気持ちだと勘違いしたり、思い直したりしてやきもきするものです。
この映画の主人公もその気持ちの狭間で相当(笑)やきもきします。主人公が理性だとしたら、もう一人の本音の自分まで出てきてしまって、主人公を唆してきます。
下宿を出てしまえばよいのですが、住宅難の時代そうそう住むあても無く、嫉妬や思慕の気持ちは募るばかり。ついに主人公は犯罪めいたことを画策します。
しかし、丁度その日、下宿でとある事件が起こり主人公は全く別の原因で奥さんの体に触れ、奥さんと過ごすことになります。
そして、その事件をきっかけに一層奥さんが主人公に親密に接してくることで、主人公は自分の失恋を完全に思い知るのでした。(と、私は解釈しました)
最後のシーンで、主人公ともう一人の心の中の主人公が空き地の土管の上に座っています。主人公はどこか清々しい顔、心の中の主人公もさみしいような嬉しいような顔。映画では描かれていませんが、この後彼は下宿を引っ越すでしょう。(原作では引っ越すところまで描かれています)
空き地に土管って、何かを思い出しませんか?そう、「ドラえもん」です。熊切監督は、この作品の主人公に「のび太」を、心の中の自分に「ドラえもん」をイメージしたと言います。恋愛をした時は、しかも一方的に好きになった時は、誰しものび太になりますね。そして、無理なことがわかっているからこそドラえもんに助けてもらいたくなる。秘密道具を使いたくなる。
永井荷風をドラえもんに仕立て上げた、これぞクリエイティブ!!
面白い映画を見ました。
それでは、また。
ザンギリ頭ヲ叩ヒテミレバ 文明開化ノ音ガスル
こんばんは。みや子です。
私先日、ぎうなべを食べて参りました。