溝口健二作品「赤線地帯」
1956年公開、舞台も同時期の映画「赤線地帯」です。
こちらの作品のあらすじなぞりはせず、登場するレトロな意匠について見て参りたいと思います。
映画自体が気になる方は、DVDにもなっていますのでそちらで見て下さい。
大正時代が終わり30年も過ぎた時代ですが、意匠はレトロで華やか。
現在の吉原の風俗街が昭和の面影を残すように、当時の吉原も大正の面影を残していたのではないかと思われます。大正・昭和と区切っていますが、人は時代を横断して生きてますし、文化もしかりでしょう。あくまで年号ですからね。
それでは長くなりますが、お付き合いください。
物語はこの、サロン夢の里の玄関から始まる。
浅草の「浅」の字が旧字で時代を感じさせる。
サロンの女性たちとオーナーが集まり、なにやら話し合い。炬燵の柄に注目。
こんな柄の炬燵ぶとんが欲しい。。。
同じ炬燵の間を別の角度から。
奥に見える襖の柄に注目。伝統模様の「吉原繋ぎ」。
吉原という廓に縛られる人生を表している。
なんとこの映画に皮肉なメッセージ・・・
大きな招き猫!
間仕切りのガラスの意匠が素敵。
若尾文子扮する売れっ子芸者のお部屋。
マグカップに火鉢で温めた牛乳を注ぐ。
京マチ子の登場シーン!
何回見ても、カメラワークやBGMが最高。
コメディタッチで、吉原の暗さを吹き飛ばす!
若尾文子の着物姿は見ものの一つ。
当時の暖房器具は火鉢。奥の花の形の鏡もかわいい。
京マチ子扮するミッキーのお部屋は洋風で女の子らしい。
壁には裸の西洋美人ポスターが。ミッキーはマリリンモンローが憧れのようす。
馴染みの客にビールを注ぐ若尾文子。
あっ!オールド上海でしょうか??小さすぎてわかりませんが。。
若尾文子の部屋にも3匹セットの招き猫!
着物と合わせたイヤリングの美しさ。
「一緒になろう」と大金を貢いだ男を突き放すシーン。
こんなとこでする約束を本気にする男が悪い!
見よ。この美しく冷酷な表情。
木暮美千代扮する生活に窮した主婦。
あまりにも甲斐性の無い夫。
しかし彼女は夫と子供と自分の命を守るため、吉原で働くのだ。生きるため。
真ん中にあるのは火鉢。ここはお蕎麦屋さん。
化粧品屋さんの店内。
木暮美千代の背後には資生堂パール歯磨きの看板が見えている。
口を大きく空けている子供のポスターはなんだろうか・・
同じ化粧品屋さんにミッキーも入店。
店頭に並ぶレトロな化粧品の瓶に目を奪われる。
ミッキーの部屋の火鉢。にやかんがかかっている。
どこもかしこもこうした火鉢でやかんのお湯を沸かしているのが印象的。
三益愛子扮する年増の女が鏡を見て髪の毛を整える。
襖の模様に注目。
以上。溝口健二の「赤線地帯」意匠でした。
あらすじを追うことをテーマにしていないため、わかりにくかったらすみません。
これらの写真を見て映画に興味を持って頂き、本編を見て頂けたら嬉しいです。
この作品、テンポ・カメラワーク・脚本・美術、どれをとっても非常に面白いです。
強く生きる女性讃歌とも言えるこの作品ぜひ見てみてください。
それでは、また。
みやこ