匂い立つ乙女 おとめつばき
こんにちは。みや子です。
今東京では乙女椿が満開です。
歩いていると、そこかしこに咲くピンクのかわいい花。
派手に咲く桜のそばで、緑の葉の影に頬をピンクにさせて隠れているような、いじらしい花。私はこの花に大正ロマンを感じるのですが・・皆様はいかがでしょうか。
- 夏目漱石の『それから』の冒頭にも椿
誰か慌たゞしく門前を馳けて行く足音がした時、代助の頭の中には、大きな俎下駄が空から、ぶら下がつてゐた。けれども、その俎下駄は、足音の遠退に従つて、すうと頭から抜ぬけ出して消えて仕舞つた。さうして眼が覚めた。
枕元を見ると、八重の椿が一輪たゝみの上に落ちてゐる。代助はゆふべ床の中で慥かに此花の落ちる音を聞いた。彼の耳には、それがごむまりを天井裏から投げ付けた程に響いた。夜が更けて、あたりが静かなせゐかとも思つたが、念のため、右の手を心臓の上に載せて、肋のはづれにたゞしくあたる血の音をたしかめながら眠に就いた。
朱鷺色に白の透かしの乙女椿がほつりと一輪。
じっと視たが、狭い座敷で袖が届く、女房は、くの字に身を開いて、色のうつるよう掌に据えて俯向いた。
このほかにも、様々な文学で椿が取り上げられています。
身近にありながらとても美しい花です。
椿は日本原産の花。学名はカメリア・ジャポニカ。
1680年ごろヨーロッパに渡り、19世紀中頃流行したそうです。
デュマやヴェルディの『椿姫』は有名ですね。
当時舞踏会には欠かせない花だったそうです。
最後に震えるほど可憐な乙女椿を。
それでは、また。
みやこ
≪参考サイト≫
青空文庫